100人のフリーランサーと仕事をして気付いた一番大事なスキルが「信頼感」だった

大変ありがたいことに、これまで数多くのフリーランスの方々とお仕事をさせてもらってきました。

その数は100を超えました。イラストづくり、文章の推敲、動画づくり、ビジネスアイデアの調査などなど、そのジャンルは多岐にわたります。国も日本だけでなく、ドイツ、スペイン、トルコ、インド、南アフリカ等、世界各所です。

そんな皆さんのことを振り返りながら、特に素晴らしいと思った人たちに共通しているものはなんだろうかと考えました。そして、ひとつの答えにたどりつきました。

それが、信頼感です。

信頼こそが最強の武器

どんな素質が求められるのか。どんなテクニックが必要か。そんな議論も大事かもしれません。

しかし、ジャンルや業界を問わず、圧倒的な汎用性を持つ強みがあります。それが信頼感です。

これに勝るものは、今のところ思いつきません。それくらい大事です。

絵を描くにしても、市場調査を行うにしても「どの人とお仕事をするか」「どの人とお仕事をしてよかったか」考える際に、信頼感が大きな決め手になっていることがわかりました。

なぜ信頼感が決め手になるのか

なぜ信頼感なのでしょうか?

答えは簡単です。これを説明するためには、私が何を考えて、何の影響を受けて、これまでのフリーランサーの方々を評価してきたかを考える必要があります。

鍵は恐怖にあります。

評価の裏に恐怖あり

私は恐怖を抱えています。はっきりと認めます。

相手を評価する際には「特定の恐怖」がどれだけ取り除かれたかに注目しています。

詳しく説明します。

その恐怖とは、時間やお金を無駄にされるのではないか、騙されるのではないかという感情です。どの人と仕事をする前にも(意識せずとも)この不安がつきまといます。

そして、評価をする際には、この恐怖の感情が(予想通り)発生したか、それともしなかったかが焦点になります。

裏切られないこと

裏切られなかったかどうか。仕事を通して何も怪しげなことがなかったかどうかがポイントです。そのような意味では、仕事を決めたとおりにちゃんと遂行するという基本が重要です。

この際に問題になるのが、楽をしようとしているかどうかです。仕事を効率化することは重要です。しかし、単純な手抜きはまた別の話です。

不思議なもので楽をしてお金を稼ぐことを第一に考えている人は、一緒に仕事をしてみるとよくわかります。

あらゆる判断や回答が、その人の楽な方にどんどん収束していくのです。

例えばデザインの話をしていても、できるだけ同じデザインを使い回すことを強く主張するパターンなどが典型例です。もちろんブランドのイメージに一貫性を保つためにテンプレートを作るのはわかりますが、その決断が「楽をしたいために」されている場合には要注意です。

投資が無駄にならないこと

投資が無駄にならなかったかどうか。これも大事なポイントです。

一番簡単な評価方法が、その人とのお仕事から得られた価値と支払った価値を比べる方法です。価値は色々な尺度で計測できます。

  • 時間で価値を評価する
  • 結果で価値を評価する

一つ目が時間です。時間で区切り、それに対して払った額が妥当かどうかを評価します。

二つ目が結果です。結果が出たかどうかで評価します。これのためには測定できる目標を定めることが重要です。例えば、閲覧数、高評価数などです。いわゆるKPI(重要業績評価指標)が必要になります。

恐怖の解決=満足

ここまででご紹介したような恐怖の解決こそが、買い手にとっての満足になります。

つまり、この不安や恐怖をいかに取り除けるかで、その人の評価が大きく変わります。

仕事はただ言われたことをやるだけでは不十分だということです。それを越えて、不安や恐怖を取り除く助けになることが肝要です。

これをうまくできると、どうなるのか。「この人なら信頼できるかも」という感情が買い手に生まれます。これこそが、信頼感が重要な理由です。

恐怖→安心の感情変化は誰にでも起こる

この感情の移り変わりは私だけに言えることではありません。あらゆる消費者に当てはまります。何を買う場合も同じです。

  • 洗濯機を買うとき
  • パソコンを買うとき
  • 英会話教室を選ぶとき

洗濯機を買うときに「うるさすぎないか」「小さくないか」と不安を抱きます。

パソコンを買うときに「性能が低くないか」「使いづらくないか」と不安を抱きます。

英会話教室を選ぶ際に「本当に英語が話せるようになるのか」「仕事や勉強で忙しいのに授業に集中できるか」と不安を抱きます。

私たちは、お金を払う際には、程度の違いはありながらも、その投資行為が無駄にならないか常に気にしているのです。人間はそんな不安だらけの生き物です。

売り手(フリーランサーの人でも、洗濯機販やパソコンの店員でも、英会話教室オーナーでも)は、このような不安を解消することを目指すのが肝です。

評価は恐怖の解消度で決まる

ここまででお伝えしたとおり、恐怖や不安は誰にでも起こるものです。お金を使って何かを手にしようとする時には特に避けられない感情です。出費というある種の痛みを伴うわけですから、それに見合う(またはそれ以上の)何かを手に入れないと納得できません。

商品やサービスの買い手は、買い物の後に「その恐怖が解消」されたかどうかで評価を決めます。理想はやはり、恐怖が完全に消え去って「最初は不安だったけど、最終的には買ってよかった(安心感)」と思ってもらうことです。

言うなれば、購入前にあった恐怖は過去の話ですので、過去の恐怖を未来の安心につなげることが鍵です。この過去と未来の変化の差が大きいほどに「価値ある投資(購入)だった」と消費者は思います。

  • 過去の恐怖(大)→未来の安心(大)=最大の満足度
  • 過去の恐怖(小)→未来の安心(小)=気付かないほどの変化(満足度も低い)

疑念の解消には時間がかかる

売り手(フリーランサーやその他あらゆる仕事)からすると、お客さんとの関わりの全てが、恐怖や不安を解消する方向につながる「手札」になるわけで、これを意識することが重要です。

面白いもので、これは文字通りすべてのやり取りの中で肝に銘じておく必要があります。顧客と関わる場面次第で手を抜いていいというものではありません。

つまりステージ1からステージ100まで全てで信頼感を意識することが必須です。

ひとたび買い手に疑念が生じてしまうと、それを取り去るのには時間がかかります。

私の例をお話しします。あるフリーランサーの方とのお仕事でのことです。

その方にはマーケティングのお仕事のお手伝いをしてもらいました。

どんなことをするか、何を目指しているか、なぜそれをするのかなどの話し合いから始まります。これを共有し、疑問を解消した上で、お値段をご提示いただくという流れでした。

信頼は最初から一貫して目指すべきもの

最初の話し合いまではよかったのですが、途中から「あれ?」と思う場面が増えていきました。感情で言うと「信頼していたのに…大丈夫かな…」というものです。何がそんな感情を引き起こしたのか。

信頼を失う要素①セールストーク

それがセールストークです。セールストークは営業のためのお話であり、どんなものを売る人にとっても“必須”の技術とされています。たしかに便利な場面はあるかもしれません。しかし、個人的には、かなりあやしい印象を与えるテクニックが世の中に広まっている気がします。

例えば「本来なら〇〇円ですが、今回のところ…」などの文言です。こんな言葉を信頼している相手から言われたらどうでしょうか?私なら少し残念な気持ちになります。どことなく「必死に売り込まれている」気分です。

信頼を失う要素②あいまいな回答

さらに、もうひとつ気になる(学びになった)ことがありました。仕事の明確さの話です。相手の方はパッケージのようなかたちでお仕事を提案してきました。

お得意なパターンがあるのかと思い、それもいいと感じました。しかし、話を進めていくうちに「おやおや」と思う部分が少しづつ増えてきました。

それはどういうことかというと、仕事の内容が明確でないのです。色々と質問をしてもあやふやにされました。このような場合には、明確にしないことで仕事で楽をしようとしている、または、開示しないことで仕事の難易度を評価できないようにしている可能性がありますので要注意です。

ここまでを踏まえて、自分であれば信頼性を獲得するために、以下を意識しようと学びました。

いかがわしいセールストークや疑念を招く駆け引きはしない

結局は人と人の対話ですので、私はいかがわしいテクニックに頼らずにシンプルに話を進めることをおすすめします。その中で相手が抱えている恐怖や不安を解消することに徹すればいいのです。

セールストークや心理テクニックのようなもの(特に使い古されているもの)は、使い方を誤ると逆効果です。特に、すでにある程度の知識のある人、ビジネスでそのような概念に普段から触れている人に使うと毛嫌いされる可能性の方が高くなると思いますのでご注意ください。

仕事の中身を包み隠さず話す

仕事として何を行うのかを隠さずに話すことも重要です。信頼は「明かす」ことで大いに獲得できます。その最たる例が仕事の内容でしょう。どの業界でも、不明な要素が多すぎるとお客さんには不安が(解消するどころか)つのるものです。

例えば弁護士に相談に行ったとします。悩みを抱えてわらをもつかむ思いかもしれません。そして、あれこれと「これは大丈夫ですかね?」「これはどうやって進めるべきでしょうか?」と質問したとします。相手が「まあ、詳しいことはおいといて、やってみます」のような曖昧な回答をされたらどうでしょう。

多くの人は「真剣に向き合ってくれていない」「いい加減だ」「はぐらかされている」という印象を抱くはずです。そして「この人は信頼できないかも」と疑念を抱き始めるのです。

さいごに

今回は、実体験として100を超えるフリーランサーの方々とお仕事をしてきて、何が一番大事な要素であるかを考察し、その結果をご紹介しました。100という数字はまだまだですが、この段階で一度、一緒にお仕事をしてくれた皆さんから学びを得るために時間を取って考えてみました。

あらゆる項目を考えましたが、ダントツで信頼感が王座に君臨しています。

もちろん個別の仕事に関わるスキルを磨くことは大事です。プログラミング、動画制作など、その技術がなければ(目指すレベルによっては)仕事が成立しないかもしれません。しかしながら、ある意味でそれを凌ぐ力を持っているのが「信頼感」だと私は思っています。

「信頼できる人」にはどの業界であっても仕事が舞い込みます。結局は人が「誰にお仕事をお願いしようか」と決めます。同じく人が「この人とのお仕事はよかった」と評価を行います。

人と人のつながりですので、信頼感を絶対に忘れてはなりません。人間には、失敗したくない、損したくないという本能があり、それが恐怖や不安という感情になって出現します。それを丁寧に解決していくのが、どんな仕事をする人にも大切な姿勢なのではないでしょうか。