創造的な仕事をしたい。せっかくならそう思うものです。では、あなたなら、思い立った後に何から始めるでしょうか。創造的な仕事を「職種」で探そうとしていないでしょうか。
確かに、職種によって「創造的であることがどれだけ良しとされるか」が違います。明らかに、市役所よりも絵描きの方が創造性が求められます。
それだけ極端な例はあるものの、それを除けば大抵の仕事は「自分のやり方次第でいくらでも創造的になる」ものです。つまり、仕事内容や職種に完全に依存するわけではありません。
創造的な仕事をしたいと思ったら、まずは今やっていること、今自分にできることをいかに創造的にするかと考えるのが、一番の近道です。既に目の前にある仕事で創造的な仕事の練習をするのがベストです。
創造的な仕事が嫌われる時
では、なんでもかんでも創造性を意識して仕事をすればいいかというと、そういうわけではありません。大事なのは、いつ創造的になるべきか、という空気を読むことです。創造性のスイッチにONとOFFがあり、状況を見ながら使い分ける能力こそが社会で必要とされます。
創造的な仕事が嫌われることがあります。それが、単純な同意が求められている状況です。たとえば「今回のプロジェクトの広告費は前回と同じで進めようと思っているのだけど、どうかな?」と聞かれたとします。あなたはつい気持ちが昂って「そうだ、創造性を発揮しよう」と思い「敢えて、10倍にしてみたらどうでしょうか?」と熱弁したとします。
大方の意見が固まって、さあ、後はプロジェクトを開始するだけだ、と皆が思っていた時に、あなたがそんな発言をしたらどうでしょう。白い目で見られ、次からはプロジェクトに呼んでもらえなくなるかもしれません。ビジネスの現場にはそんな過酷さがあります。
これが、創造的な仕事の勘違いのいい例です。創造的な発想や思考は、それが求められている時に発揮すべきです。そんなシンプルかつ当たり前のことを忘れてしまうと恐ろしい結果がもたらされます。この例では、誰も予算について創造的なアイデアなど求めていません。
予算をどこでどう使うかといった議論では、大いに創造性を発揮できるかもしれません。大事な点が使いどころです。使いどころを間違うと、創造性ではなくただのめんどくさい人になってしまいます。
どうすれば創造的な仕事が好まれるのか?
では、どうすれば、創造的な仕事をして「おお、いいね」と喝采をもらうことができるのか。答えから言えば、目的を先に特定してその「方法」を「ユニーク」にすることに徹すればうまくいきます。
順序立てて説明します。まずは、目的を特定することからです。どんな仕事をするにしても、そこには目的があります。広告を出すのは、商品やサービスを知ってもらうため。その「知ってもらう」という行為にはさらに「買ってもらう」という目的があります。
このように、行動と目的が連鎖するのがあらゆる仕事の構造です。
これを理解した上で、まずは目的を理解してみましょう。先の広告費の例で言えば、なぜ「広告費は前回と同じで進めよう」という話があり「どうかな?」と続いたのか考えることが肝です。
これは、別のアイデアを出してくれという合図ではありません。広告費についての議論はどこかで終わっていて、あくまでも「確認はしなければならないのでしている」だけです。
創造的な仕事の前には地味な確認が欠かせない
創造的な人というと、どこか異世界感のある人を思い描くかもしれませんが、これは大きなミスです。異世界感をつきつめると、ただの変人になります。変人として生きることと、創造的な仕事をすることの間には、大きな違いがあります。
ここまでで説明したように、創造的な仕事をするためには「その場所で創造的な仕事が求められているのか」を考えるステップが必要です。この手順は地味です。というわけで、地味な確認→創造的な発想という流れを使いこなすことが極めて重要になります。
会議やプロジェクトの準備や開始の段階では、まず地味な思考を意識します。地味な思考とはつまり、丁寧に要件を確認することです。クライアントからの要望があるのであれば、その情報を丁寧に読みます。わからないことがあれば、これについてもしっかりと質問して理解を確かめます。
この最初のステップは、一見すると非常に地味です。しかし、どんな創造的な仕事にも欠かせない準備運動です。その後の躍動的な発想につながるとは想像しづらいのが面白いものです。
役立つ創造性のある人は全体像が見えている
役に立つ創造性を発揮する人は、全体像が見えています。頭の中で物事が整理されています。そして、どこで創造性を求められているかを、ちゃんと理解しています。
そんな有益な創造性を仕事で発揮する人になるためにおすすめの方法があります。それが、ラベル付けです。次に関わるプロジェクトで、是非ともマインドマップを作ってみてください。その際には「知っていることの上流にさかのぼる」癖もつけてください。
例えば「YouTube広告に投資する」という具体的なようではっきりしないマーケティングプロジェクトがあるとします。これを聞いて「そうか、YouTube広告の出稿が目的か」と納得してはいけません。なぜ出稿するのか考えてください。これこそが上流に意識を向けることです。
なぜそうするのか問い続けることで、上に進んでいくことができます。それをマインドマップとして記録します。すると、広い視野で目の前のプロジェクトをとらえることができます。
そして、こう自分に問いかけます。このどこで創造性を発揮すると、上流にある目的との整合性を保ったまま最大の効果を発揮することができるだろうか。ここでのポイントは以下の2つです。
- 上流の目的と整合性を保っていること
- 自分の仕事の効果を最大化すること
この方向性が見えていれば、創造性からかけ離れて迷惑な変人になってしまう危険性を排除できます。目的が見えていて、何のために目の前のプロジェクトが存在しているのかがわかっている状態です。そして、どこでアイデアの幅の広さが求められているのかも明確になります。